ヴィンセントが教えてくれたこと

9月4日(金)より全国ロードショー、全国ロードショー

さあ、人生のホームワークを始めよう。

 2014年の秋、北米でわずか4館の限定公開でスタートしながらも、幅広い観客層の共感を誘ってみるみるうちに2500スクリーンに拡大。ボックスオフィスの4位まで駆け上がり、興収4400万ドルのスマッシュ・ヒットを記録した1本の映画があった。加えて批評家筋の絶賛も相次ぎ、ゴールデン・グローブ賞では作品賞と男優賞にWノミネートされるという快挙を果たした『ヴィンセントが教えてくれたこと』。日本でも多くの映画ファンが公開を待ち望んでいたハートウォーミングな感動作が、いよいよお目見えする。
 新進気鋭の監督セオドア・メルフィが書き下ろしたオリジナル脚本は、素行のよろしくない独居老人ヴィンセントといじめられっ子の少年オリバーが織りなす風変りな友情物語。最悪の出会いから始まったふたりのささやかな冒険の日々は、憂鬱な日常にどっぷり浸かっていたヴィンセントにバイタリティーを取り戻させ、子供らしいワンパクさが欠落したオリバーに喜びと勇気を与えていく。ふたりの絆を通して描かれるのは、友情や家族愛といった普遍的なテーマと、どんな人間も生き方も無意味ではないというポジティブなメッセージ。そこには人生をより豊かに輝かせるヒントがちりばめられ、あらゆる観客の胸を弾ませる珠玉作に仕上がっている。
主演のビル・マーレイは、『ゴーストバスターズ』などのヒット作から『ロスト・イン・トランスレーション』の哀愁漂う名演技でも名高い喜劇スター。近年も『グランド・ブダペスト・ホテル』などの話題作で健在ぶりを示している曲者俳優が、生きることの価値を見失った不良老人ヴィンセントに憎めない愛嬌を吹き込み、魅力的なキャラクターを作り上げた。またアカデミー主演女優賞に二度ノミネートされた実績を誇るナオミ・ワッツは、妊娠中のロシア人ストリッパーという意表を突いた役どころに、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のコメディエンヌ、メリッサ・マッカーシーは切実な悩みを抱えたシングルマザーに扮し、確かな演技力を発揮している。
そして、ビル・マーレイを相手に堂々たる掛け合いを披露したオリバー役のジェイデン・リーベラーは、その繊細で奥行きのある表現力がすでにハリウッドで注目の的になっており、キャメロン・クロウ、ジェフ・ニコルズといったトップクラスの監督と組む新作が待機中。キャラクター造形やストーリーテリングの並々ならぬ手腕を証明したメルフィ監督とともに、今後の飛躍が大いに期待されている。